~CRO任せにせず、自社で動かせる仕組みを整える~
はじめに
治験を計画どおり進めるためには、外部委託先であるCROとの連携だけでなく、社内の体制づくりが欠かせません。
特に医療機器メーカーやベンチャー企業では、治験担当者が少人数で複数業務を兼務しているケースも多く、情報が分散しがちです。
この記事では、治験をスムーズに進めるために必要な「社内の仕組み」「役割分担」「情報共有の工夫」について、実践的な視点から解説します。
治験が滞る企業に共通する“体制の落とし穴”
治験の進行が遅れる原因の多くは、社内の体制にあります。
例えば、次のようなケースです。
- 担当者がCROやPMDAとのやり取りを1人で抱えてしまう
- 治験の進捗や課題が社内で共有されていない
- 意思決定のタイミングが不明確で、対応が後手に回る
これらはすべて、「情報が一方向に流れている」状態が原因です。
治験を成功させるには、情報・責任・判断を組織内で循環させることが重要です。
治験に必要な3つの社内役割
治験責任者(Decision Maker)
治験の最終判断を担う立場です。
プロジェクト全体の進行状況を把握し、CROとの契約・計画変更・予算配分などの決定を行います。
忙しい経営層が兼任する場合は、判断のタイミングを明確にする仕組みが必要です。
治験実務担当者(Coordinator)
治験に関する日常的なやり取りを担う担当者です。
CROや医療機関とのコミュニケーション、資料の管理、スケジュール調整などを行います。
重要なのは「情報の窓口」として機能すること。
報告・共有のルールを決めるだけでも、全体のスピードが上がります。
社内調整・サポート担当(Supporter)
他部署(薬事・開発・品質管理など)との橋渡し役です。
治験の進行を妨げないよう、社内手続きや書類整備を円滑に行うサポートをします。
兼務でも構いませんが、“誰がその役を担うのか”を明文化しておくことが大切です。
情報共有をスムーズにするための工夫
治験は進行中に数多くの資料・報告・連絡が発生します。
社内共有が滞ると、判断が遅れたり、同じ質問が繰り返されたりと効率が下がります。
治験共有フォルダやプロジェクトツールの活用
報告書、議事録、スケジュール表などを一元管理。
フォルダ名や更新ルールを決めておくと、誰でも最新情報にアクセスできます。
定期ミーティングの実施
週1回・30分でも良いので、CROや社内関係者の進捗を共有する時間を設けましょう。
「何が完了し、何がリスクか」を明確にすると、対応が早まります。
議事録・ToDoリストの共有
会議の要点をまとめ、次回までの宿題を整理。
口頭報告だけで終わらせず、決定事項を“残す”ことが信頼性向上につながります。
CROと社内をつなぐ“治験推進リーダー”の重要性
CROとのやり取りを単に「外部委託管理」と考えると、治験はうまく進みません。
理想は、社内に治験推進リーダーを置くことです。
このリーダーは、
- CROとの情報整理と課題共有
- 社内意思決定のスピード調整
- リスク発生時の対応方針の提案
を担う存在です。
治験を実務レベルで“動かせる人”が社内にいるだけで、プロジェクトの安定度は大きく変わります。
もし社内リソースが足りない場合は、外部の治験支援パートナーをリーダー代行として活用するのも効果的です。
まとめ:仕組みで支える“動く治験”
治験を成功させるのは、個人の努力ではなくチームの仕組みです。
担当者が入れ替わっても動きが止まらないように、情報・役割・判断を明確にしておくことが、結果的にCROとの連携をスムーズにし、リスクを最小限に抑えます。
ユーロドクターコンシェルジュ合同会社では、
現場経験を持つ専門家が企業の立場で伴走し、治験を動かす社内体制づくりを支援しています。
“治験を動かす力”は、仕組みづくりから。
一歩ずつ整えれば、確実に成果はついてきます。